過激思想が見え隠れする発言が多く、果たして本当に公正な見解として受け取られるのか疑問です。
彼の意見がどれだけ支持を得るのか、今後の展開が気になります。
斎藤知事への擁護が不発に終わったという元フジテレビアナウンサーのエピソードは、メディアの発信力や発言の影響力を再認識させます。
彼が伝えたかったメッセージは何か、読者にどう捉えられたのか、一緒に考えてみませんか?
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※本稿は、高井宏章『新聞のススメ 1日15分でつくる教養の土台』(星海社新書)の一部を再編集したものです。
【高井】僕が「紙の新聞を読んだ方がいい」っていうのは、印刷物、活字だからなんだよね。スマホで見てたら、要はネットのニュースと同じでしょ。よく知られるように、紙と画面とでは、文章を読んだ時の理解度が全然違う。脳みその使い方から違うという研究もある。
だから紙で読めるって、それだけですごいアドバンテージなんだよ。新聞はその訓練というかウォーミングアップにもなる。ふだん活字に触れてない人は、本を1冊読むなんてつらいでしょ。
【新倉】本当にそう思います。活字を読む力が衰えてるなと思いました。
【高井】新聞を毎日読んでいる人と読んでいない人、日々の差はほんの少しだけど、複利というか雪だるま式で差がついていくと思う。で、活字ってことで言うと、本を1時間読んだ方が有益なので、新聞にかけるのは15分ぐらいでいいんですよ。
【布施川】飛ばし読みで、良かったんだな。
【高井】では今日は「15分で新聞を読む」の中級編です。今日、僕が持ってきたこの新聞は、これから説明するような「読み方」をしてしまっているんだけど、気がつきました?
【布施川】はい。ページがまるまる破かれて、抜けている。
【高井】そう。要は「乱暴なスクラップ」なんです。「これは」という記事を取っておく。あるいは、気になるけど長い記事をとっておいて、時間ができたら読む。昔はね、綺麗に記事を切り抜いてスクラップ帳に貼る、みたいなことをやってたけど、それはダルいでしょ。
【布施川】うちの祖父はやってましたけど、僕は全然続かなそう。
【高井】たとえば今日、僕が破いたのはこの大きな記事のある3面。ハサミかカッターで切り取ったら1分以上かかるけど、破るのは慣れてるので数秒です。
【新倉】「物価高、家賃も動かす 指数25年ぶりに上昇」ですか。紙面の配置的にとても重要なニュースだとはわかったんですけど、ピンとこなかったやつだ。
【高井】これはエポックメイキングな出来事で、保存しておいた方がいい記事。そう思ったら、ページごと破る。破ったら、お目当ての記事の見出しが見えるように4つに折りたたむとA4よりちょっと小さくなる。はい完成。これをストックしておくだけ。簡単でしょ?
【新倉】やり方はわかりました。けど、このニュースの重要性がイマイチわからないです。「家賃が上がった」って、そりゃ物価高だから家賃も上がるだろうと思ってしまいます。
【高井】でもね、実は家賃って今まで上がってこなかったんですよ。家賃が上がらないことは、日本の物価が上がらない大きな原因だったわけ。
家賃って、支出に占める割合がすごく高いでしょう。消費者物価は、平均的な家庭が何にどれだけお金を使ったかを調べて、そのウェートにそって物価の平均を出しています。
家賃のウェートは2割ある。ここが上がらないと、家賃以外の部分が多少上がっても、物価全体はなかなか上がらない。
【新倉】確かに。
【高井】その家賃が25年ぶりに上がった。逆に言うとね、家賃が下がり続けた25年間って、ちょうど日本経済がおかしかった期間に当たる。
【新倉】「失われた20年」とか、聞いたことあります。
【高井】「失われた30年」とも言われますね。その間、ずっと家賃が上がっていない。それがやっとプラスになったという話。それだけでも大事なのは分かるけど、この記事がナイスなのは国際比較をしてくれているところ。
【布施川】欧米では家賃が5%上がっているらしい。
【高井】欧米の家賃が勢いよく上がってるのは、賃貸契約が原則1年単位で、毎年家賃が上がるから。日本は普通、2年更新でしょ。
【布施川】なるほどねえ。
【高井】おまけにね、日本の家賃って、家主が簡単には勝手に上げられないの。法律的に。
【新倉】ああ、借地借家法! 民法の授業で習ったことがあります。
【高井】うん。日本の賃貸契約は借り手の権利がべらぼうに強い。一般論として、家を借りる方が家主より「弱者」だから、保護しましょうという発想だよね。家賃の引き上げを拒否しても、家賃を滞納していても、そう簡単には追い出せない。
【布施川】だから家賃が上がらないのか。
【高井】欧米は毎年更新で、家賃が上がって嫌なら出ていけ、という仕組み。僕がロンドンで家を借りた時も、契約書に「物価上昇分を考慮して家賃を上げる」と明記してありました。アメリカも欧州もこの何年かで消費者物価がバンバン上がっているから、家賃も連動して上がってしまう。
【新倉】それはキツいなあ。家を追い出されるって、生活の基盤を失うってことですもんね。
【高井】日本は借りる人には安心な仕組みなんです。今みたいにインフレになっていても、引っ越さなければ家賃はほぼ上がらないから、生活が急に苦しくはならない。築年数が経って物件が古くなると家賃を引き下げるケースも多いしね。
そうじゃないからこそ、アメリカやイギリス、フランスでは、インフレに抗議してデモやストライキやって、大騒ぎしているんですよ。この2、3年で主要都市の家賃は1~2割上がっているはず。
【布施川】そりゃあデモもしますよ。
【新倉】そんなこと全然知らなかったです。法学部では、立場の弱い借主の権利は当然保護するべきだよねって勉強したんですけど、国によって事情は違うわけですね。
【高井】ちょっと調べると分かるんだけど、都内のマンションの賃料、新規の契約分は着実に上がってます。数年前に借りた物件との差がものすごく広がっている。
【布施川】なるほど。新しい住人には今の相場通りの家賃で貸せるわけですから。
【高井】つまり、これから引っ越すと、家賃は高くなるかもってことだね。都心の不動産とか新築マンションの値段が上がっているって話はしょっちゅう出るんだけど、それがついに家賃に波及してきた、という重要ニュースなわけです。
【高井】僕は毎朝、新聞をバーッとめくって、興味ある記事を破っちゃう。破ったやつは後から読む。読むかどうか迷うやつも、とりあえず破っちゃう。破らないで読む記事もあるけど、ほぼ見出しを見るだけだから、この作業は10分か15分で済む。で、破り取ったページ以外はもう捨てちゃっていい。
【新倉】確かに、10日間ですでにけっこうな量の新聞紙の束が積み上がっているんですよね。
【高井】それが紙の新聞の最大のデメリットなんだよね。だからこまめに捨てる。破った紙面は、たとえば仕事の合間にコーヒー飲もうかな、みたいな時に読む。読んで、もういいな、と思ったら、それもその日に捨てちゃう。取っておきたい記事だけ、ストックしておく。
1週間か2週間分たまったら、棚卸し的に読み返すというか見返す。時間が経つと、「なんでこれを取っておいたんだ?」みたいなのもあるから、それは捨てる。「これは」という記事はもう1回読む。
【新倉】なるほど、復習のサイクルになってるのか。
【高井】そう! 記事には頭に入れておいた方がいい数字やファクトがあるでしょ。たとえばさっきの家賃の記事なら、1998年以降はずっと下落が続いたと書いてある。つまり「2000年代は家賃が一度も上がっていなかった」といえるわけ。
【新倉】スッキリした言い方になりました。
【高井】僕は「高井宏章と横川楓の『お金のハナシ』」っていうラジオのレギュラー番組を持っていて、そこで経済や投資についてフリートークや解説をやってるんだけど、家賃の話をしている時にサラッとそういうことが言えると、おおお、ってなるでしょう。
【布施川】なります。話に説得力がありますよね。
【高井】誰かと飲みに行った時だって、「引っ越そうと思ってんだけど」みたいな話になってさ、「家賃大丈夫か、2000年代に入ってから一度も上がってなかった家賃が今上がってんだぞ」とか言える。
【布施川】言ってみたい!
【新倉】嫌味じゃない感じで、無理なく数字が出てくるのはすごいカッコいい。
【高井】そういうネタを仕込んで、言うタイミングを待っている(笑) 家族には「ウンチクおじさん」って言われるんだけど。
【新倉】口に出すことによって覚えるという手法は、教育業界ではわりと定番ですし、誰かに話すことで知識が定着しそうです。
【高井】気を付けているのは「ウンチクを垂れるためだけにウンチクを垂れない」ことだね。絶妙なタイミングで繰り出せると、気持ちいいから絶対忘れないんだよね。邪なインセンティブ(笑)
【新倉】身に覚えがあります(笑)
【高井】破ったページの棚卸しに話を戻すと、1~2週間ためると、だいたい半分以上は捨てる羽目になる。重要な記事でも、時間を置いて2回読むとわりと頭に入るから、もう不要だなと思ったら捨てる。それでも残ったのは保存用の壁掛けフォルダに差しておく。この保存用は数カ月か半年に一度、同じように棚卸しする。
完全保存版にするのは、重要だけどググっても出てこないようなやつかな。たとえば安倍元首相が撃たれたみたいな紙面は、超重要だけど、ググったらすぐ出てくるから、わざわざ紙は保存しない。1年もやると、年間のお気に入り記事みたいなコレクションができる。
【高井】短期の活用法を紹介します。僕はもう20年近くマーケットの状況を月1回、A4ペラ1枚にまとめるコラムを書いています。このコラムに使えそうな記事は絶対に破っておく。それが3枚もあれば執筆がメチャクチャ楽になる。
【布施川】そうですね。僕もネットで連載を持っているんですけど、ネタがあると書きやすいです。
【高井】ちゃんと新聞破るのを毎日サボらずにやるだけで、ゼロからだと2~3時間かかる作業が30分で済む。記事を探すのは日々の新聞チェックのついでにやるから、ものすごい時間の節約になるんです。
【新倉】私も教育関連の日刊ニュースを書いているんですけど、題材として使えそうな記事は手元のメモに残しています。それを今後、物理的に破いちゃえってことですね。
【高井】うん。教育だと日経には大学面とかあるよね。ネットのブックマークでも機能は同じじゃないか、と思うかもしれない。でも、経験上、紙を破いて置いておく方が圧倒的に楽で、見返しやすい。
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日本人にも人気が広がっているガチ中華も、もとはといえば中国人をターゲットにした 商売だった
日本に暮らす中国人の数は日に日に増加し、いまや80万人を超えている。そんななか、在日中国人社会で独自の発展を遂げる経済圏について、『日本のなかの中国』を上梓したジャーナリストの中島恵氏に聞いた。
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〈丸亀製麺の小麦粉、12.5kg、2600円、西川口で受け取り〉
〈信州産きゅうりの購入に相乗りしてくれる人募集。6kg1255円の箱が3箱あり〉
これは、中国のチャットアプリ「微信(ウィーチャット)」上にある、埼玉県の蕨(わらび)市や川口市に住む中国人グループに投稿されていたものだ。古着やおもちゃ、家電などの不用品が売り出されているほか、マッサージ店の求人募集まである。ウィーチャットや中国版インスタグラム「小紅書(シャオホンシュー)」、「微博(ウェイボー)」などのSNSは、在日中国人にとって欠かせないツールになっていると中島氏は言う。
「中国人はマスメディアよりも、同じ境遇の人や身近な人が集まるSNSの情報を信用します。それは日本にいる中国人も同じで、ウィーチャットには教育や仕事などさまざまなカテゴリーのグループが存在し、情報交換が行われています」
ウィーチャットは、決済機能なども搭載されたスーパーアプリ。情報媒体としてだけでなく、生活インフラの役割も担っている。
「中国食品スーパーや中国野菜を生産している農場から商品を購入することも可能です。牛乳と卵以外は中国人のSNSグループから購入するという中国人もいるほどです。日本人が知らないところで、在日中国人の経済ネットワークが構築されているのです」(中島氏)
蕨、川口に住む中国人のウィーチャットグループでは、靴や小麦粉が取引されていた
食品に限らず、不動産や家事代行など中国人向けのさまざまな業者をSNS上で探すことができる。日本のQR決済サービスを利用することもあれば、業者によってはウィーチャットでそのまま決済することも可能だ。中国人だけで経済が回っているわけだが、それはサイバー空間に限らない。
「中国人が経営するあるリフォーム会社は、従業員がほとんど中国人ですし、顧客も大半が中国人。壁紙などの資材も在日中国人が経営する問屋から仕入れており、中国人社会の中だけで完結しています。
また、インバウンド業界でも団体旅行客を受け入れるのは中国系の旅行会社で、買い物に連れていくのも中国人が経営する『ラオックス』などの免税店やお土産物屋。当然、対応する店員も中国人です。また、個人旅行客は空港などで中国人の白タクを利用する。観光地などのハードは日本ですが、ソフトを提供するのは中国人なのです」(中島氏)
近年、増えているガチ中華もターゲットは中国人であり、中国人間のビジネスは美容整形、ネット通販、中古車販売、自動車修理などさまざまな業界に広がっている。こうした仕事には日本語が必要なく、最近では日本に暮らしながら日本語を話せない中国人も増えているという。最近では富裕層の移住が増えているが、彼らも日本語を話せない人が多いと中島氏は指摘する。
「中国政府が厳しいゼロコロナ政策をとったことにより、2022年頃から日本に移住する中国人が増えていますが、彼らは身の安全や資産のリスクヘッジが目的であり、必ずしも日本に特別な思い入れや関心があるわけではありません。かつての中国人は、日本に来たらまず日本の社会に溶け込もうとしましたが、いま日本に移住してくる中国人は、『日本の中国人社会』に溶け込もうとするのです」(中島氏)
日本は近いうえに中国人社会がすでに構築されているため、移住しやすいのだ。富裕層のなかには経営者や投資家だけでなく、香港の芸能人などもいるという。
「多くの日本人が知るある香港スターが日本に移住しているのは、中国人社会では有名な話。彼は『ハイオク満タンお願いします』しか日本語を話せないそうです」(中島氏)
出入国在留管理庁によると、2024年6月末時点での在日中国人の数は84万4187人で、半年間で2万2000人以上も増えている。さまざまなバックグラウンドをもつ中国人が移住してきたことで、在日中国人社会は多層化していると中島氏は言う。
「かつては日本に来るのは、出稼ぎ労働者や一部のエリートが多かったですが、近年は中間層がどんどん増えています」(中島氏)
この中間層が、日本人とは感覚が異なるという。
「中国の大手企業では年収2000~3000万円を稼ぐ人がザラです。しかも副業の規模が大きく、不動産をいくつも所有して賃貸で運用しているという人もいます。日本人からしたら富裕層に見えますが、彼らは普通の会社員なのです。
こうした幅広い中間層に加え、富裕層ももっと日本に来るでしょうし、特定技能制度を利用して建設現場や物流業界で働こうという人も増えてくるでしょう。中国の縮図のように、あらゆる階層の中国人が日本で増えていくのです」(中島氏)
米大統領選で勝利したドナルド・トランプ前大統領は、中国製品に対して最大60%の関税を課すことを示唆するなど、中国に対して強硬姿勢を示している。対米ビジネスを展開している中国企業は厳しい状況に置かれるし、米国に留学する学生も減るかもしれない。
となると、緩衝地帯や代替地として日本に進出する企業や学生も出てくるだろう。私たちは、ますます多層化する在日中国人社会とどう共存していくかを考えるべきなのかもしれない。
●中島恵(なかじま・けい)
山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。新聞記者を経てフリージャーナリスト。主に中国や東アジアの社会事情を取材。近著に『日本のなかの中国』(日経プレミアシリーズ)など多数。
文/大橋史彦 写真/photo-ac.com、WeChat